施肥設計をしてみよう!
前回の記事では、三大栄養素についてを紹介しましたが、今日の記事では実際に施肥設計のやりかたについてご紹介していきます。
施肥設計をすることによって、残肥(栽培後、畑に残ってしまう肥料分のこと)が少なくなり、地力を損なわず栽培することができるでしょう。
特に、有機栽培の方は必ず施肥設計を行った方が良いです。有機栽培で収量が少なくなるのは、害虫や雑草被害もさることながら、施肥の不足や過剰が原因の一つです。
それでは、実際にどのように計算すればよいのか紹介しましょう。
1.農林水産省HPにある、施肥基準を見る
作物ごとに施肥量は全然違います。
例えば、さつまいもは肥料分をそこまで必要としませんが、ネギなどはかなりの量の肥料を必要とする作物だと知られています。
まずは、作物ごとの施肥基準を確認していきましょう。
施肥基準は農林水産省のHPにある、「都道府県施肥基準等」のページで確認することができます。
本記事では、仮にさつまいもで計算していきましょう。
都道府県ごとに若干の誤差はありますが、さつまいもの場合、N.P.K(窒素・リン酸・カリウム)の割合は3:10:10になります。
つまり、10aあたり、3kgの窒素、10kgのリン酸とカリウムが必要ということになります。
典型的な土物の野菜という感じで、窒素分がほとんど必要なく、逆にリン酸とカリウムを多く求める作物なのです。
2.肥料に書かれているN.P.K割合を確認する
次に、自分の使用する肥料のN.P.K割合を確認します。
今回は有機物肥料も無機物肥料も使うことにしましょう。
袋で購入すると、多くの場合、N.P.Kはわかりやすく表記されていますし、堆肥などを直接牛舎などで購入する場合は聞けば教えてくれます。
まずは基本的に堆肥をベースにします。
牛糞堆肥は豚糞や鶏糞に比べると栄養分が少なく、初心者でも使用しやすいものです。
水田から畑地転換する際はもみ殻に次いで施用した方がいい有機物肥料となります。
牛糞堆肥は1000kgあたり、N.P.Kがどれも2kg前後であることが多いです。(それぞれの堆肥場で要確認。リン酸・カリウムが若干多くなる傾向にあります。)
次に化成肥料です。
今回は苦土重焼燐と硫酸カリウムを使うことにします。
どちらも単肥(ある特定の要素しか含まない化成肥料のこと)ですので、計算がしやすいため、しっかりと計算できるなら単肥がおすすめです。
苦土重焼燐のN.P.Kはそれぞれ0:20:0、硫酸カリはそれぞれ0:0:20となります。
3.施肥計算を行う
さて、ここまで来たら、用意した肥料をさつまいが必要な10aあたり3:10:10に近くなるよう、当てはめていくだけです。
まずは堆肥の計算からです。
今回は化成肥料で窒素分は投入しないので、全ての窒素分を有機物肥料で補う必要があります。
窒素が充足するよう、堆肥の量を計算していきます。
さつまいもの窒素必要量は10aあたり3kg、牛糞堆肥の窒素量は1000kgあたり2kg。
計算式は以下の通りです。
3(必要量)÷2(肥料成分量)=1.5(必要数量)
1.5(必要数量)×1000(基本量)=1500kg
以上の計算より、1500kg牛糞堆肥を投入することによって、窒素が充足されます。
問題になってくるのが1500kg堆肥を投入しでも、リン・カリは満たされていないことです。
堆肥を投入した段階では、どちらもわずか3kgしか投入されていないことになるので、残り7kgを化成単肥で補う必要があります。
計算式は以下の通りです。
7(不足量)÷20(肥料成分量)=0.35(必要数量)
0.35(必要数量)×10(基本料)=3.5kg
つまり、リン酸・カリウム共に3.5kgの化成単肥が必要になるということです。
以上の結果から、さつまいもの場合は以下のような施肥設計になります。
- 牛糞1500kg/10a
- 苦土重焼燐3.5kg/10a
- 硫酸カリウム3.5kg/10a
作物の施肥基準と肥料の成分量が分かれば、以上の計算式に当てはめるだけで誰でも施肥設計をすることができるでしょう。
4.まとめ
さて、今回は少しだけ難しい内容を紹介しました。
僕も紹介していて疲れた。
肥料を正しく使うことは作物の成長を促すだけでなく、土壌をキレイにして、畑を未来に繋げるために大事なことなのです。
最近は有機栽培やオーガニックに目を付ける方もいますが、実は化成肥料が悪いというわけではなく、使いすぎるということが環境に悪いというだけ。
減肥に挑戦したいという方はやみくもに減らすのではなく、施肥設計をしっかりと行うことが成功の秘訣なのです。